大企業など商品を大規模に生産・販売展開する場合、商品企画はニーズ発想(マーケットイン)=ユーザが望むモノを提供する方式、で行います。商品企画時に綿密に調べて決定した「商品コンセプト」が存在するので、「訴求コンセプト」もこれに沿って開発を進めます。なので、大きなズレは発生しづらいです。
これに対し、多くの中小企業では、自社が持つ技術や強み、既存商品を生かした商品企画・開発=シーズ発想(プロダクトアウト)を行います。そのため、商品の技術やスペックを定めた商品設計書や仕様書は存在するものの、商品コンセプトがない、もしくは曖昧というケースが多く見受けられます。
ユーザは技術やスペックを買うのではなく、「自分が抱える課題を解決するソリューション」「自分の要望・希望を実現するソリューション」を求めて商品やサービスを購入します。そのため、これらの技術やスペックから成る商品全体の良さをユーザニーズ本位の「コミュニケーションコンセプト」「訴求コンセプト」に落とし込むプロセスが必要になります。プロモーション成果を高めるにはとても重要なプロセスですが、これが不十分のままサイト制作やプロモーション施策を実施してしまうと、残念な結果になってしまいます。
Supernovaで支援させていただいた数々の中小企業のプロモーション案件もこのようなケースが非常に多く、プロモーション実施前に「訴求コンセプト整理」のご支援を行っています。
これまでの経験を踏まえて、「訴求コンセプト整理」の方法やポイントについてまとめてみました。ごっちゃになりそうなので、便宜上リストを1と2に分けましたが、1と2は同時進行で行うことも可能です。そのほうが効率が良いかもしれません。
- 1. 強みの洗い出し、再整理のポイント
- 2. 強みの掘り下げと選定のポイント
1つ1つ解説していきます。
1. 強みの洗い出し、再整理のポイント
まずは、商品の強みや特長を改めて洗い出します。最終的には言語やイメージで表現しなくてはならないので、頭のなかにあるものも、言葉に表してみましょう。言葉で表すと漠然さ、曖昧さがなくなり、より明確になります。
1-1. 自社商品の強み・特長を洗い出そう
大きそうな強みから小さいものまで、箇条書きでも良いので。慣れないうちは、はじめから絞り込んでしまうと大事な見落としがあるかもしれないので、絞り込まずできるだけたくさん出しましょう。
1-2. 「すべての商品は競争ありき」を忘れない。競合商品と比較する
そして、競合他社の商品の強みも洗い出します。わかってるから要らない!と言わずにぜひやってみてください。改めて抽出して、しっかり比較してみると、結構知らないことも多く、新しい発見があります。比較表をつくるとわかりやすいです。
1-3. 狭義の競合だけでなく、広義の競合もしっかり見よう
「競合」ってどこまで見ればいいの?という疑問が湧くと思います。競合=ユーザがその商品を購入するときに比較検討する商品、と考えるとわかりやすいと思います。
顧客企業のなかには、「うちの商品には競合がいない」と言う方がいます。が、世の中に存在する商品のなかで、競合がない商品はめったにありません。必ず比較する商品があります。直接的に同一の商品(狭義の競合)は存在しない場合も、同じ効果・類似の効果をもたらす他の商品やソリューション(広義の競合)が存在するはずです。
また、商品に関わっていると、どうしても近視眼的や自社贔屓になってしまいがちなので、中立的に見る良い機会になります。闘いに勝つには敵を知ることも大切!
1-4. 奥ゆかしすぎるはもったいない。強みはしっかり拾いきる。が、ファクトの域は守る
顧客企業のなかには、自社の製品に自信を持てないようで、強みを聞いてもあまり出てこないことがあります。自社商品を卑下しすぎるのもよろしくなく、強みと言えるものはしっかりと拾います。
とはいえ、誇張はウソと思われることもあり、ターゲットユーザの信頼を損ないかねません。「ファクト」として言える域を守りつつ、その範囲内で言えるベストを見い出すのがベストです。数字を提示することで印象が強まるものは数字も活用したいです。
1-5. 自社内では客観的に抽出できないときは、第三者の意見も聞く
自社商品ばかり見ていると、客観的に見えなくなることがあります。そのような場合は、第三者に聞いてみることも1つの手です。
予算やスケジュールに余裕があり、本格的に把握したい場合は調査を活用することもできます。スピーディに行いたいときは、周囲の人に聞くのもあり。視点は人それぞれなので、新しい発見があります。できるだけ異なるタイプの方々に聞いてみると、意見もさまざまで参考になります。私もよく周りの人にささっと聞くことで、足りない要素を補充したりします。
Supernovaの案件でも、自社の強みが伝えられないという顧客企業がよくいます。控えめすぎたり、客観的に見れなかったり、人によってバラバラだったり…。そういう場合は、社内インタビュー・ヒアリングやデスクリサーチを代わりに行い、客観的に強みをを抽出・分析するなどのお手伝いをします。深く主観的に関わってしまうと、なかなか客観的な視点に戻りにくいようです。
2. 強みの掘り下げと選定のポイント
次に、洗い出した自社の強みを元に、それらの掘り下げとプライオリティ付けを行います。
2-1. 自社視点、自分視点ではなくユーザ視点で。極力顧客データや声を元に客観的に
リストアップした強みについて、具体的にどんな人にとって、どんなシーン、どんな課題を解決するのか等を掘り下げていきます。
ここで大事なのは、できるだけ自社・自分視点ではなく、客観的に掘り下げたいということ。いまやネットでいろんな情報を得られる時代です。自社で実施した調査で得た一次データや生の声があればベストですが、検索、SNSなど、二次情報を調べる手段はいくらでもあります。ドンピシャの情報がない場合は、ある程度信頼できる類似情報を元に「仮説」を立てることも可能です。何もベースにないよりは確からしさが高まると思います。かなりセンスと経験が求められますが…。
各ニーズの量や強さをしっかりと見定めたいときは、マーケティングリサーチ(市場調査、ユーザアンケート)を活用して、しっかりと検証を行うことをお薦めします。予算やスケジュール、求めるデータの精度に応じて、調査の実施方法の選択肢もいろいろあります。
2-2. 自社独自の強みが見えるところまで強みを掘り下げる
よくあるのが、「便利」「効率がよい」「楽しい」といったざっくりとした、ビッグワードレベルを強みとしてしまうケースです。そのほうがターゲットが広がるから、たくさん売れるという理屈です。
実はそれは逆効果で、広い、ビッグワード=曖昧なので、どう便利なのか、どんなふうに効率が良いのか等、具体的な人や場面、ベネフィットが伝わりにくい。ユーザは他との違いや、自分が求めているものに近いのかがわからないので、却って選んでもらいにくくなります。
また、その言葉の広さの分だけ競争相手も多く、広いマーケットを狙う大企業も競合になる等、勝負がより厳しくなります。特に中小企業の場合、誰もが知る大企業の強力商品との勝負は勝算的に厳しいため、自社独自の強みがはっきりと見えるところまで明瞭化することを推奨します。「勝てる勝負を見極める」ことも成果を高める重要なポイントです。
「どんなシーンで、どのように便利なのか」「どんな人にとって、どんな良いことがあるから効率的なのか」等、具体的に掘り下げることで自社独自の強みがより明らかになるので、たくさんの商品選択肢があるなかで、その課題を感じている人の共感を得やすく、「自分に合う」「自分向き」と選択してもらいやすくなります。
2-3. 自社商品が勝てそうな強み、セグメントは?プライオリティは?
強みを掘り下げたあとは、そのなかから自社商品の勝算がより高そうな強み、またはその組み合わせを見極めます。どんな商品にも競合があり、常に闘いです。闘いに勝てる可能性が高いものを選定します。すべての強みが他社にない強みである必要はありません。但し、強みの組み合わせによって「自社独自の強み」を見い出せるとベストです。
そして、訴求ポイントはセグメントによって違うので、セグメントごとに選定することがとても重要です。セグメント別に、訴求ポイントが複数ある場合は、それらのプライオリティ付けもします。
*セグメント=人のかたまり
例)女性、男性、年齢層、職種、ライフステージ、ライフスタイル、嗜好、価値観等
それらの強みがどんなセグメントに合うのか、その強みが最も強力にささりそうなセグメントをターゲットセグメントとして選定します。セグメントは複数あっても良いですが、多くても3つくらいまでに止めるとプロモーション活動がしやすいです。強みのささりやすさのほかに、ボリュームの大きさ、リーチしやすさ等々も考慮して、プライオリティを判断します。一番重要なセグメントのことを、プライマリーターゲット、次に重要なセグメントをセカンダリーターゲットといいます。
皆さんも、日々生活のなかでユーザとしてさまざまな商品・サービスのウェブやプロモーションに接触し、商品の良さを知ったり、共感して好きになったり、逆に嫌いになったり等の経験をするなか、「コミュニケーション」はとても大切で、ユーザの商品選択に大きな影響を与えることはご理解いただいていると思います。
それが「提供する側」の立場になると、中立的な視点、ユーザ視点で考えられなくなってしまうことがあります。もちろん、自分が商品のターゲットユーザから遠く、想像しきれないという時もあると思います。また、さまざまな事情により重要なプロセスを省いてしまうこともあると思います。
たくさんの費用をかけても「訴求ポイント」がズレていると本当にもったいないです。ご面倒でもウェブを作ったり、プロモーションを行う前に少し時間を費やしてみてください。「訴求ポイント」を整理するだけで、成果はぐーんと高まることがあります。
「訴求ポイント整理」の方法とポイントについて、ざっくりですが一通り説明しました。事例を提示できると良いのですが、顧客事例を出すわけにいかず、説明文ばかりでわかりづらかったかもしれません。まったくチャレンジしたことがない方や、見落としていたプロセスやポイントがある方は、ぜひ実施してみていただけると本望です。
ご不明点がありましたら、いつでもお問い合わせください。
次回は、訴求ポイントのさまざまな切り口「訴求アプローチ」に触れたいと思います。
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